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佐藤 達彦; 渡辺 立子; 仁井田 浩二*
no journal, ,
長期宇宙滞在や粒子線治療を計画する際、高エネルギー荷電粒子(陽子,重イオンなど)被ばくによる生物影響を適切に評価する必要がある。そのためには、高エネルギー荷電粒子飛跡周辺におけるLineal Energy分布(細胞DNAレベルの微少体積中における沈着エネルギー分布、以下y分布と略す)に関する情報が必要となる。そこで、われわれは、モンテカルロ法を用いて、幾つかの荷電粒子飛跡周辺のy分布を計算した。また、その結果をもとに、すべての荷電粒子飛跡周辺におけるy分布を再現できる解析式を導出した。さらに、その解析式を汎用粒子輸送計算コードPHITSに組み込むことにより、複合放射線場におけるy分布を計算する手法を確立した。発表では、開発した計算手法について詳細に述べるとともに、粒子線治療時において、線エネルギー付与(LET)及びy分布を用いて評価した線量分布の違いについて説明する。
松永 武; 柳瀬 信之; 眞田 幸尚; 長尾 誠也*; 上野 隆; 佐藤 努*; 磯部 博志*; 天野 光; Tkachenko, Y.*
no journal, ,
Puの環境中挙動を系統的に把握することを目的として、チェルノブイリ発電所近傍の土壌・水中懸濁物・堆積物・河川水・湖沼水について事故起因のPuの濃度と物理的・化学的存在形態を調べた。発電所周辺の汚染土壌から、縦貫するプリピァチ川への事故起因Puの年間移動率は最大で約0.1%(1986年、事故発生年)であり、その後は約0.01%(2000年)まで低減したと推定される。Puは、土壌,水中懸濁物のいずれでも、有機物相並びに難溶解相(粘土鉱物等)に大部分が見いだされた。事故発電所下流10kmのプリピァチ川堆積物でもPuは難溶解相に集中的に存在し、Sr-90と対照的であった。このことは、土壌における難移動性,水中における難溶解性を意味している。Puが事故地域近傍の河川水により運ばれる物理的な形態は、60-80%が懸濁物に含まれた粒子態、10-20%がコロイド態、残る10-20%が低分子量の溶存成分であることが見いだされた。この運搬形態は、施設起因のPuについてローヌ川等で得られた結果とよく一致している。
佐藤 大樹; 高橋 史明; 遠藤 章; 山口 恭弘; 大町 康*; 宮原 信幸*
no journal, ,
中性子の生物影響評価において動物実験から得られたデータをヒトに応用するために、マウスのボクセルファントムを開発し、粒子輸送シミュレーションにより体外及び体内放射線場の特性を解析した。実験動物用マイクロX線CTで取得した画像データを、原子力機構でBNCT線量評価用に開発されたJCDSコードを用い、3次元ボクセルデータへ再構築した。このボクセルデータをもとに、PHITSコードを用い粒子輸送計算を行った。本研究により、マウスの照射実験に基づく生物学的効果比(RBE)を詳細に評価するために必要となる体内の放射線場を詳細に解析することが可能となった。
藤井 健太郎; 横谷 明徳; 鹿園 直哉
no journal, ,
本研究では高輝度放射光施設(SPring-8)から得られる軟X線を線源とし、損傷の収率の励起元素依存性を明らかにすることを目的とした。試料となるDNAフィルムを作成するため、TE緩衝液で希釈したプラスミド(pUC18)試料溶液(1g/L)をガラス基板上に5L滴下し乾燥させた。得られたフィルム状の試料(6.510g/cmをSPring-8BL23SUに設置されたイオン質量分析用真空チェンバに導入し、炭素,窒素及び酸素K殻励起領域の単色軟X線(270, 380, 435, 560eV)を室温で照射した。照射後試料をTE緩衝液で回収し、鎖切断によるコンフォメーション変化をアガロース電気泳動法により調べた。得られたssbの収率は、エネルギーによらずおよそ1210ssb/Gy/Daであり、これまで報告されている軟X線(2keV)照射の場合とほぼ同じであった。講演では、Fpg及びNthの二種類のグリコシレースで処理(37C, 30min)することで得られた酸化的塩基損傷の収率のエネルギー依存性についても紹介し、鎖切断と酸化的塩基損傷及びこれらを含んだクラスター損傷の生成に果たす光電効果及び二次電子の効果について議論する予定である。
横谷 明徳; 牛込 剛史; 鹿園 直哉; 藤井 健太郎; 漆原 あゆみ; 鈴木 雅雄*; 田内 広*; 渡辺 立子
no journal, ,
本研究の目的は、放射線によるエネルギー付与の空間構造とDNA損傷の性質の関連を明らかにすることである。高水和状態のDNA薄膜を照射試料とし、ラジカル補足剤濃度を変えた溶液試料に対する軟X線(150kVp)照射による1本鎖切断(SSB)収率との比較を行った。次に高水和DNA試料に対してさまざまなイオン粒子を照射し、生じたSSBと2本鎖切断(DSB)に加え、8-oxoGなど塩基除去修復酵素(EndoIII(Nth)及びFpg)処理によりSSBに変換され得る酸化的塩基損傷と、これらがクラスター化してDSBとして検出される損傷の収率を調べた。その結果、(1)細胞内環境では全SSB収率のうち約30%が直接効果により生じること,(2)SSB収率はほとんどビームの性質に依存しないがDSBは複雑に依存すること,(3)酵素処理により検出される塩基損傷は軟X線領域で最大となるがLETの増大とともに劇的に減少し、(4)同じLET領域でもイオンビームに比べ光子の方が高い塩基損傷収率を与え、さらに(5)すべての放射線照射でFpgよりNth処理の方が有意に大きなSSB収率を与えることが明らかになった。
漆原 あゆみ; 鹿園 直哉; 横谷 明徳
no journal, ,
電離放射線による生物影響の原因として、DNA損傷の生成が挙げられるが、細胞にはさまざまな修復機構によって恒常性を維持することも知られている。しかし、DNAヘリックス2回転中に二つ以上の損傷が近接して生じた「クラスターDNA損傷」では、その修復が阻害されることが報告されてきている。クラスターDNA損傷の中で、最も研究が行われているのがDNA二重鎖切断である。一方、塩基損傷による突然変異誘発については、ほとんど明らかにされていない。そこでわれわれは、クラスターDNA損傷が単独の損傷に比べて突然変異誘発を促進するかどうかを、大腸菌を用いて調べた。塩基損傷には、8-オキソグアニン(8-oxoG)とチミングリコール(TG)を用い、8-oxoGが制限酵素認識配列中にあり、その相補鎖の1bp離れた位置にTGが来るようオリゴヌクレオチドを設計した。損傷を含むオリゴヌクレオチドは、pUC18及びpUC19プラスミドとライゲートさせた後、大腸菌野生株及びグリコシラーゼ欠損株()に移入し、菌株を一晩培養した。その後プラスミドを回収し、クラスターDNA損傷による突然変異の誘発頻度を、制限酵素により切断されない断片の割合によって調べた。その結果、8-oxoG, TGそれぞれの単独の損傷よりも、損傷のクラスター化によって突然変異頻度が増加することが明らかとなり、クラスターDNA損傷は修復を受け難い可能性が示唆された。
鹿園 直哉
no journal, ,
クラスターDNA損傷は、電離放射線によってDNAへリックス二回転中に二つ以上の損傷が生じるものとして定義される。われわれは、その生物効果に関してはいまだほとんど不明である、二本鎖切断以外(non-DSB type)のクラスターDNA損傷に注目し、合成損傷による細胞内での変異生成を調べるアプローチを試みた。塩基損傷として、8-oxo-7,8-dihydroguanine(8-oxoG)とdihydrothymine(DHT)を用い、大腸菌野生株もしくはグリコシラーゼ欠損変異株()に導入した。誘発突然変異は8-oxoGが制限酵素 AIの認識配列内にあることを利用して、制限酵素で切断されない断片として検出した。その結果、8-oxoG単独に対し、8-oxoGがDHTとクラスター化することで突然変異頻度は実際に高まることが見いだされた。突然変異頻度はにおいては野生型と同程度と低かったが、においては非常に高くなり、では、変異頻度が35%前後までさらに高まることが明らかとなった。これらの結果から、(1)損傷のクラスター化によりFpg活性は阻害されること,(2)DHT鎖の複製の阻害が変異頻度の上昇に関与すること,(3)8-oxoGとDHTのクラスター損傷の変異誘発抑制にはMutYが重要な役割を果たすこと、が示唆され、クラスター損傷が持つ高い変異誘発効果及びその変異誘発機構に対する手がかりが示された。
横田 裕一郎; 山田 真也*; 長谷 純宏; 鹿園 直哉; 鳴海 一成; 田中 淳; 井上 雅好*
no journal, ,
高LET重イオンが植物に大きな影響を及ぼすメカニズムを明らかにするため、高LET重イオン照射した植物細胞に誘発されるDNA2本鎖切断(DSB)の定量的な分析を行った。タバコBY-2プロトプラストにLETの異なるヘリウム,カーボン及びネオンイオンを氷温下で照射した。ゲノムDNAをパルスフィールドゲル電気泳動法によりサイズに従って分離し、DNAの断片化パターンからDSB生成数及び隣接するDSBの間隔を評価した。DSB生成量はイオン種及びLETに依存し、調査範囲では124及び241keV/mのカーボンイオンで最大となった。0.2keV/m線,9.4及び17.7keV/mのヘリウムイオンはDSBをほぼランダムに誘発するのに対して、94.8から431keV/mのカーボンイオン及び440keV/mのネオンイオンではDSBをゲノムDNA上に集中して誘発した。高LET重イオンが植物細胞にDSBを効率よく・集中的に誘発することは、重イオンが有する高い生物効果の一因であると考えられた。
柿崎 竹彦; 浜田 信行*; 和田 成一*; 坂下 哲哉; 原 孝光*; 宝達 勉*; 夏堀 雅宏*; 佐野 忠士*; 舟山 知夫; 深本 花菜; et al.
no journal, ,
血球細胞は全身に分布しており、放射線被曝を完全に避けることはできず、照射された血球細胞は全身へ移行し、障害を受けた細胞の処理のために全身的に組織反応が生じる。したがって血球細胞への被曝線量は放射線治療において照射線量を限定する要因の一つであり、動物の血球細胞の粒子線に対する感受性を評価することは、今後粒子線治療を獣医療へ応用するときに照射線量を決定するために必須の情報となる。そこでネコTリンパ球株化細胞FeT-Jの放射線感受性を軟寒天包埋培養によるコロニー形成能を指標として評価する方法を確立し、Coの線及びH, He、そしてエネルギーが異なる2種類の炭素イオンビームによる照射効果を調べた。各放射線の照射でLETの増加(2.8114keV/m)に伴い生存率は著明に減衰し、RBE並びに不活性化断面積は増加し、高LET炭素線の細胞致死効果が高いことが示された。一方、10%生存線量を照射した場合、アポトーシス誘発率にLETの違いによる有意な差は見られなかった。したがって、ネコTリンパ球では同率に致死効果を与える線量であれば、イオン種やLETの違いで細胞死に至る経緯に差が生じないことが明らかにされた。獣医領域での粒子線治療のための基礎データの一つが示され、また炭素線以外の粒子線でも獣医療に応用できる可能性が示された。
高倉 かほる*; 金杉 勇一*; 浜田 信行*; 和田 成一*; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 柿崎 竹彦; 小林 泰彦
no journal, ,
重イオンビームで照射された培養細胞からの培養上清を介するバイスタンダー効果を調べた。化学PCC法により染色体損傷を調べるとともに、DNA損傷の修復酵素としてよく知られるDNA-PKがバイスタンダー効果にどのようにかかわっているかを見るために、DNA-PKcsの阻害剤であるLY294002(LY)による影響を調べた。ヒト正常線維芽細胞GM05389に対し、TIARAのイオンビーム照射装置を用いて、Neイオン(260MeV, 437keV/m)を10Gy相当照射、24時間培養した後に上清をレシピエント細胞に移し、その後12時間培養してからレシピエント細胞の染色体損傷をカリクリンAを用いたPCC法により調べた。染色体1本に切断が見られるchromatid breaksと、同じ場所の染色体2本に切断が見られるisochromatid breaksをレシピエント細胞について調べたところ、明らかなバイスタンダー効果が確認された。レシピエント細胞をLYで処理した場合は、処理しなかった場合に比べてバイスタンダー効果は増大した。一方、ドナー細胞をLYで処理してから照射し、上清をレシピエント細胞に加えて、レシピエント細胞におけるバイスタンダー効果を調べたところ、LY処理を行わなかった場合と比べてバイスタンダー効果は明らかに減少し、バイスタンダー効果におけるDNA-PKcsの関与が示唆された。
坂下 哲哉; 池田 大祐*; 浜田 信行*; 鈴木 芳代; 辻 敏夫*; 和田 成一*; 舟山 知夫; 小林 泰彦
no journal, ,
新生ニューロンの影響を考慮しなくてもよく、かつ簡単な味覚連合学習を扱うことが可能な成虫段階の線虫を用いて、神経系で処理される連合学習と放射線照射との関係を機能レベルで明らかにすることを目的とした。はじめに、連合学習の基礎となる化学走性自身に影響がない線量領域を決め、次に各種条件付け時の放射線照射効果を調べた結果、(1)当該線量域において、放射線に曝露した線虫の学習能力の低下は認められない,(2)連合学習の条件付けの途中で放射線を照射したときのみ顕著な化学走性の応答が観察される,(3)(2)の応答には初期と後期応答があり、初期応答には神経伝達物質の異常に伴う走行性の異常が関与している可能性があることが明らかとなった。これらの結果は、放射線が神経系の機能が変化する際に働く因子に作用する可能性を示唆している。
鈴木 芳代; 坂下 哲哉; 辻 敏夫*; 深本 花菜; 浜田 信行*; 和田 成一*; 原 孝光*; 柿崎 竹彦; 小林 泰彦
no journal, ,
神経系のモデル生物として知られる線虫()は、化学物質に応じた誘引,忌避行動(化学走性)を示す。また、水溶性の誘引物質であるNaClと餌の有無を組合せて条件付けすると、餌がない状態でNaClにさらした場合では、NaClを忌避するように化学走性が変化する連合学習能を有している。われわれは、NaClと餌との連合学習の最中に線照射による一種のストレスを加えるとNaClに対する化学走性の攪乱が生じること及び揮発性の誘引物質であるベンズアルデヒドに対する化学走性には変化が生じないことを見いだし、線照射によってNaClの情報伝達に関与する神経回路上のいずれかの部位に変化が生じたものと予想された。そこで、化学走性にかかわる神経回路上で放射線ストレスによって変化する部位を探るために、全ニューロンと神経接続のデータベースをもとに、化学走性に関与するニューロン及び接続を再現する神経回路モデルを作成し、照射前後の応答をコンピュータ上でシミュレートすることで、神経回路上で生じた変化の予測を試みた。
森 ちひろ*; 杉本 朋子*; 太齋 久美子*; 坂下 哲哉; 舟山 知夫; 柿崎 竹彦; 浜田 信行*; 和田 成一*; 小林 泰彦; 一石 英一郎*; et al.
no journal, ,
線虫に過剰な放射線照射をすると、生殖腺内の減数分裂前期パキテン期の細胞でアポトーシスが誘導される。ヒトの原ガン遺伝子c-Abl1はTyrosine kinaseとしてDNA修復の制御に関与している。さらに、線虫のabl-1欠損変異株においては、放射線照射後、生殖腺でのアポトーシスが野生株に比べ高頻度に誘導されることから、アポトーシス誘導に対して負に制御することが示唆されてきた。そこで本研究では、線虫DNAマイクロアレイを用いて、野生株とabl-1に放射線を照射し、放射線応答とabl-1の制御下にある遺伝子群の網羅的な発現解析を行った。さらに、TIARAの重イオンマイクロビーム細胞照射装置により、生殖腺内の局部照射を行った。その結果、生殖腺パキテン期の部位に照射したときにのみアポトーシスは誘導され、組織特異的な放射線応答の研究に同技術が有効であることが認められた。
原 孝光*; 浜田 信行*; 大村 素子*; 坂下 哲哉; 和田 成一*; 柿崎 竹彦; 深本 花菜; 鈴木 芳代; 舟山 知夫; 小林 泰彦
no journal, ,
これまでの臨床研究から、アポトーシス抑制因子の一つであるBcl-2が固形腫瘍において高発現していること、そして、これらの腫瘍は同じ組織型であってもX線や線といった低LET放射線に難治性を示すことが知られている。しかし、Bcl-2の発現量の違いによりがん細胞の放射線致死感受性がどのように変化するかは実験的に証明されていない。そこで、本研究では、Bcl-2の過剰発現ががん細胞の放射線致死感受性に及ぼす効果を明らかにすることを目的とする。コロニー形成法によるCo線に対する10%生存率は、親株のHaLa細胞では4.8Gyあったが、Bcl-2を過剰発現させたHeLa細胞では6.9Gyであったことから、Bcl-2の過剰発現により線に抵抗性になることがわかった。今後、放射線治療による寛解性の向上を目的として、低LET放射線に比べ生物効果が高く物理学的特性にも優れていることからがん治療に臨床応用されている高LET放射線に着目し、重粒子線によるHeLa/bcl-2細胞の致死効果を解析する。
伊藤 尚*; 和田 成一*; 柿崎 竹彦; 小林 泰彦; 夏堀 雅宏*; 佐野 忠士*; 佐々木 伸雄*; 伊藤 伸彦*
no journal, ,
イヌの自然発生黒色腫由来の株化細胞(CMM2)に対して、TIARAにおいて線質の異なる放射線として、炭素線(線エネルギー付与LET=108keV/m)、陽子線(LET=2.7keV/m)及びX線(LET=1.0keV/m)を照射した。低線量域から高線量域にかけて細胞致死効果をコロニー形成法によって評価した。放射線照射後に適度な細胞を播種し、培養8日後に固定・染色により生存率を算出することによって生存曲線を作成した。X線及び陽子線照射における生存曲線は低線量域において肩を持つのに対して、炭素線照射において肩はなく、著しい生存率の低下が観察された。線質間による放射線感受性の違いを評価するため、10%生存率線量で比較したところ、炭素線,陽子線,X線の順に細胞致死効果が高く、LETが増加するにつれてX線を基準放射線としたRBE(生物学的効果比)も増加することが観察された。これらの結果より放射線のLET依存的に細胞致死効果が高くなることが示唆され、炭素線の口腔内発生黒色腫治療への適用により高い治療効果が期待されると考えられた。
浜田 信行*; 原 孝光*; 坂下 哲哉; 和田 成一*; 柿崎 竹彦; 鈴木 芳代; 舟山 知夫; 小林 泰彦
no journal, ,
高LET放射線は、低LET放射線に比べて生物学的効果が高く物理学的特性にも優れていることから、がん治療に応用されている。しかし、腫瘍病巣の内部及び周囲には正常細胞が混在するため、正常組織への照射は不可避である。一方、放射線照射生存子孫細胞において遅延的に増殖死が引き起こされることが知られているが、そのLET依存性は解明されていない。そこで、本研究では、高密度接触阻害培養をしたヒト正常二倍体線維芽細胞AG01522にCo線(0.2keV/m)及び6種の重荷電粒子(16.2-1610keV/m)を照射し、1次及び2次コロニーを形成させ、2次コロニー形成能の喪失を指標として、遅延的細胞増殖死のLET依存性を明らかにすることを目的とした。1次コロニーあるいは2次コロニーにおいて、線に対する重荷電粒子のRBEは、ともに100keV/m近傍で最大となったことから、遅延的増殖死にもLET依存性があることがわかった。その一方、1次コロニーでの10%生存線量における2次コロニーの生存率は、LETによらず一定であったことから、遅延的増殖死の起因は1次コロニー形成期間に固定される可能性が考えられる。
堀川 大樹*; 坂下 哲哉; 片桐 千仭*; 渡邊 匡彦*; 中原 雄一*; 黄川田 隆洋*; 浜田 信行*; 和田 成一*; 舟山 知夫; 東 正剛*; et al.
no journal, ,
クマムシとは、体長がおよそ0.11.0mmの緩歩動物門に属する動物群の総称である。陸生クマムシは、脱水してanhydrobiosis(無水生命)という無代謝状態に移行する特徴がある。クマムシは、無水生命状態において、さまざまな極限環境(高温・低温・高圧・有機溶媒などへの暴露)に耐性を示す。本研究では、この生物における放射線耐性に着目し、クマムシの一種・オニクマムシ()が、活動状態及び無水生命状態において、イオンビーム(He: 12.5MeV/amu, LET 16.2keV/m)とCo線照射に対し、どの程度の耐性を持つかを解析した。結果、オニクマムシにおけるイオンビーム及び線照射48時間後の半致死線量(LD)は、活動状態(Heイオンビーム: 6.2kGy, 線: 5.0kGy)の方が、無水生命状態(Heイオンビーム: 5.2kGy, 線: 4.4kGy)より有意に高かった。オニクマムシは、活動状態時には体内の水分含量率がおよそ80%であるのに対し、無水生命状態ではおよそ1%である。よって、放射線が照射された場合、活動状態の方が、体内の水分から生じるラジカルの影響を大きく受けると予測されるので、この結果は意外なものであった。この現象を説明する仮説としては、オニクマムシが、高い放射線損傷修復を持つことが示唆される。また、オニクマムシは、線よりもHeイオンビーム照射に対して高いLD値を示した。
深本 花菜; 佐方 敏之*; 白井 孝治*; 坂下 哲哉; 舟山 知夫; 和田 成一*; 浜田 信行*; 柿崎 竹彦; 原 孝光*; 鈴木 芳代; et al.
no journal, ,
カイコは、発生及び細胞分化を研究するためのよい実験材料である。カイコのコブ突然変異は幼虫背面の斑紋が瘤状に突出するもので、その主な原因は真皮細胞が異常分裂して局所的に多層になるためと考えられるが、コブ形質にかかわる遺伝子の発現がいつどこで発揮されるのかなど、不明な点が多い。これまでにカイコ4齢幼虫のコブ形成領域を重イオンで局部照射してもこの形質の顕著な抑制は認められなかった。そこで、外見上コブがまだ形成されていない、孵化直後の幼虫への重粒子線局部照射を行い、コブ形質発現の抑制の有無を調べた。まず孵化幼虫の特定領域に限定して照射するため、孵化幼虫にあわせたサイズの穴を多数有するアルミ板の幼虫固定板を作成し、その穴に孵化幼虫を入れ、上下面に透明なプラスチックフィルムを貼って幼虫の動きを抑制した。孵化幼虫の、コブが将来形成される領域に炭素イオン局部照射(LET=128keV/m, 180m)を行ったところ、コブ形質発現の消失が認められる個体は全照射個体の7割以上であった。またコブ消失部位では真皮細胞の異常分裂が抑制され、正常カイコの真皮細胞層と同じ1層のままであった。これらの結果から、コブ形質を発現する細胞・領域の決定は孵化以前に既に完了していることが明らかになった。
浜田 信行*; 原 孝光*; 坂下 哲哉; Ni, M.; 和田 成一*; 柿崎 竹彦; 舟山 知夫; 深本 花菜; 鈴木 芳代; 横田 裕一郎; et al.
no journal, ,
高密度に接触阻害させた培養ヒト正常線維芽細胞にLETが異なる重イオンマイクロビームを照射し、誘発されたバイスタンダー細胞死を解析した。約100万個の細胞のうち数個の細胞に重イオンを照射すると、コロニー形成能を基準とした生存率が約10%低下すること、また、TdT-mediated dUTP nick end labeling(TUNEL)陽性率は照射後24時間で最大に達することがわかった。一方、10%生存線量のブロードビームの照射によって、TUNEL陽性率は、照射後72時間までは増加した。そして、その照射後72時間における陽性率は、バイスタンダー細胞における照射後24時間での陽性率と同程度であることがわかった。以上の結果から、照射細胞とバイスタンダー細胞では細胞死の機序と時間動態が異なる可能性が示唆された。
東谷 篤志*; 森 ちひろ*; 杉本 朋子*; 太齋 久美子*; 坂下 哲哉; 舟山 知夫; 柿崎 竹彦; 浜田 信行*; 和田 成一*; 小林 泰彦
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モデル生物の1つである線虫Cエレガンスは、多細胞真核生物として全ゲノム解読が最初に行われるとともに、さまざまな遺伝的突然変異体の単離やRNA干渉法による網羅的な逆遺伝学的解析がなされている。さらに、世代交代期間が約3日と短く、発生過程における全細胞系譜が明らかにされていることが特徴としてあげられる。私たちは、成虫においてもその体長が約1mmと比較的小さく、透明で各細胞・組織を低倍率の顕微鏡下で観察できることから、マイクロビームを用いた局部的な放射線照射の生物影響を調べるうえでも格好の材料と考えている。そこで、TIARAの重イオンマイクロビーム照射装置を用いて、おもにCエレガンスの生殖細胞系における放射線応答に関する研究を展開してきた。これまでの実験系とその成果,生殖腺幹細胞における細胞周期の停止とアポトーシスについて紹介するとともに、今後の方向性についても議論する。